一般社団法人スマートプロセス学会

Smart Processing Society for Materials, Environment & Energy








  >>>>会長挨拶<<<<

田中会長写真
 日頃はスマートプロセス学会の活動に対して、会員皆様のご高配・ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。

 本会は1975年に発足しました高温学会(社団法人認定は1977年2月)を原点に、2012年に現在の名称に改組・改称され、本年で45年を迎えます。

 スマートプロセス学会の目的は、定款に謳われておりますとおり、「高温から低温ならびに重厚長大から軽薄短小に至る広範囲の製造および接合などにおける先進的および環境・エネルギーに配慮した革新的ものづくりプロセスに関わる学術・技術の普及と進歩発展に寄与すること」にあります。非常に幅広い科学技術分野をカバーすることになりますが、多様な人材と知の交差は科学技術の新機軸を生み出すために極めて効果的です。本会の強みは、幅広い科学技術分野をカバーしているがゆえ、異分野融合的な研究・開発を探求するとともに、そのために必要な人材を育成する土壌が自然と育まれているところにあります。ものづくりプロセスに関わる学問と異分野技術の交差、そして、それらの情報交換の場を提供し、もって未来に輝く豊かで安全なスマート社会に資することが本会の夢であります。

 本会の掲げる目的、そして夢は、科学技術の新機軸の創出を期待されている現代の潮流に乗っているものと確信しています。しかしながら、益々の発展と展開をはかるには継続的で弛まぬ改革の精神と努力が必要であります。会員の皆様には、本会の更なる発展のために、より一層のご支援とご高配を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

  今に学ぶ『温故知新』
                                                          田中 学

 2021年を振り返ると、あらためて、世界をあげて新型コロナウイルス感染症対策に取り組んだ一年であったと思う。第3波、第4波、第5波と新規感染者数の大きなうねりを繰り返しながらも、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催された。感染拡大防止の観点からほとんどの競技が無観客で行われ、テレビを通じた観戦に限定されたのは残念であった。しかしながら、アスリート達の手に汗握る数々の熱戦や栄冠のシーンにモニターを通して心から感動した。勝者も敗者も、その熱戦の裏には長年に亘る不屈の努力と勝利への情熱が垣間見えるからである。開催に努められた関係者の苦労と勇気に敬意を表したい。

 さて、本会の活動においても、パンデミックの影響により2021年はほとんどの会議やイベントがオンラインとなった。科学技術の先導とその情報発信という学会の重要な役割は絶やさない、との強い想いが学会活動をしっかりと繋いだ。モニター越しの議論や討議になったものの、学会は一定の役割を果たせたものと思う。他方、筆者が所属する大学の講義においては、2021年10月以降、多くは対面形式に戻されたが、オンラインによる同時配信やその講義を録画したオンデマンド配信が導入され、パンデミック以前に比べると大きく多様化された。講義の実施形態に関する学生アンケートによると、学生の多くは対面形式を希望しているものの、オンライン形式も一定の評価があり、とりわけ、オンデマンド配信の好感度が高い。オンデマンドの良さは、何時でも何処でも学生の都合のよいタイミングで受講できることである。逆に、対面形式の良さは、五感によって得られる情報量がオンライン形式で得られる情報量を圧倒し、教員や学生同士の新たな繋がりが広がり、相互のコミュニケーションによって、自然とコミュニケーション力を高められる場となることである。この学生アンケートは、コロナ禍が終息したときに迎える、多様性に満ちたニューノーマルな時代の到来を予感させる。

 情報を発信する場としての学会の役割は先に述べたとおりである。学会は一定の役割を果たし、キラリと光る成果を見せた。しかしながら、学生をはじめとした若手人材を育成し、新たな人と人との交流を紡ぐ場としても、学会は重要な役割を担っている。すなわち、アカデミアと産業界を繋げ、学術と技術を紡ぐことによって豊かで新たな社会を創造する役割である。

 話は変わるが、2021年秋、ある方から1941年製の古いアーク溶接機を、筆者の所属する研究所に寄贈したいとの申し出を頂戴した。現地に行って確認すると、国産初の直流アーク溶接機(日立製作所製)のシリーズであった1)。旧海軍工廠で使われていたものが第二次世界大戦後に地方公共団体に払い下げされ、その後、数年前まで現役で使われていたが、廃棄処分されたものである。今でも稼働するのに驚いた。現在、当時の製品は、現物はおろか写真もなく、唯一、挿絵が残っているだけと考えられていたが、その貴重な製品が再び姿を現したのである。このアーク溶接機によって製作された溶接構造物はもちろん、関わった人々も時代の移り変わりとともに変遷してきたものと容易に想像できる。80年の時を超えて目の当たりにしたアーク溶接機を見て、国産初を造り上げた当時の技術者の心意気、それを使ってきた技術者や技能者の息づかい、そして、今なお稼働する技術に畏敬の念を抱いた。もちろん、その間、アーク溶接機は飛躍的な進歩を遂げ、デジタル化技術やロボット化技術と融合し、最新科学の下、高精密なアディティブ・マニュファクチャリン グ技術にも応用されている。

 学術と技術は自然に生まれて、自然に育つことはない。そこには活躍する人が必要なのである。学者、研究者、技術者、技能者、学生等々、多様な人材が紡ぎ合うことにより、学術と技術は誕生し、育ち、発展し、次の時代に伝えられる。過去から現在、そして未来へと、我われ人類が自らの手で築き上げてきた科学技術に関わる有形・無形の成果に新たな発見を付け加えながら、次の世代へ継承しなければならない。そこに、人と人との繋がりと紡ぎ合いは必須である。

 2022年はコロナ禍が終息し、ニューノーマルな時代を迎えるものと期待している。時間と空間に裕度の大きいオンラインを有効に活用しながらも、リアルに人と人が紡ぐ場を再開し、多様な人材と知の交差を育むことが科学技術の新機軸を生み出すために極めて重要である。広く多分野に亘る会員を擁し、異分野融合を得意とするスマートプロセス学会は、そこに大きく貢献できるものと考えている。

参考文献 1)三田: アーク溶接技術発展の系統化調査, 国立科学博物館技術の系統化調査報告, Vol. 23(2016), 389-527.

                                      (2022年学会誌1月号掲載「學海」)


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